『身替座禅』 (平成19年 新春浅草歌舞伎)
大正時代は、長唄研精会の活動そのものが長唄の歴史だったといっても過言ではないだろう。まさに研精会の全盛時代であった。また、現在通用している長唄の楽譜が各流派毎に考案されたというのも長唄の歴史上、重要なことである。この楽譜の普及によって長唄は誰もが楽しめる家庭音楽として急激に普及していった。
4世杵屋佐吉による「三絃主奏楽」は三味線が唄から独立することに大変意義深いもので、のちの新邦楽・現代邦楽へつながってゆく端緒となった。
劇場に目を転ずれば、明治期の能の歌舞伎化に続いて、狂言に材を得た『太刀盗人』『茶壷』『棒しばり』『身替座禅』などが作られ、長唄は劇場においてもさらなる広がりを見せ、舞踊音楽としてもその首位を占めるに至る。
昭和時代、戦争は長唄界にも大きな影響を及ぼした(軍国主義的な色彩の濃い作曲が要求されるなど)が、戦後の発展にはそれを取り返すごとき目まぐるしい活力があった。舞踊会の隆盛の波に乗って復活した長唄界は、研精会をはじめ各流派からも新作・野心作が次々に発表され、競って様々な演奏会が催されるようになったのである。
【大正以降に作曲された代表曲】
あたま山・雨の四季・お七吉三(堀留)・惜しむ春・黒塚・五月雨・日月星・新平家物語・風流陣・風林火山・二つ巴・みやこ風流