長唄の歴史~大成期

『吉原雀』(正本)

『吉原雀』(正本)

『菊寿の草摺(いきおい)』(正本)

『菊寿の草摺(いきおい)』(正本)

明和~安永年間(1764-80)には、一中節から長唄の唄方に転向した冨士田吉治(1714-71)が、浄瑠璃がかった長唄(いわゆる「唄浄瑠璃」)を開拓し、この影響で長唄もさらなる成長をみせることになる。語るような曲風で、本調子を基本とし、上調子(三味線の棹に「枷(カセ)」と呼ばれる道具をつけ、もとの三味線の4度または5度高く調弦したもの)も盛んに用いられるようになった。

『娘七種』『吉原雀』『安宅の松』『二人椀久』などの名作はこの時期の産物である。俳優の動作に合わせて演奏された効果音楽「めりやす」が流行するのもこの頃である。

 

この時代の所作事は、女形の領域と決まっていたため、長唄も可憐・繊細・艶麗といった女性的な趣きの作品が多かったが、天明年間(1781-88)に至り、初代中村仲蔵などの立役も舞踊をこぞって演じるようになると、長唄の曲風も「内容本位」から「拍子本位」に移行し、放胆・豪快な面白さが添加されるようになった。

この時期の代表的な長唄には、春の曽我狂言で演じられた『菊寿の草摺(いきおい)』をはじめ、『蜘蛛拍子舞』『羽根の禿』『高砂丹前』などがある。長唄の内容に目を向けると、この時代の「合方」は関西の地歌の手事の発達の影響をうけ、器楽的な技巧を用い、替手などを加えて華やかに作られるようになった。

その他の代表曲

鬼次拍子舞・黒髪・五大力・関寺小町・手習子・木賊刈・仲蔵狂乱・範頼道行・一人椀久・紅葉狩・百夜車